火星の話


先日、一年毎にやって来る恒例の、生まれて初めての節目をまたまた迎え、皆さんに祝ってもらった次第であります。



濃霧のなか、方向を見失ってしまった不安一杯の小さな船が、やっとのことで見つけだした遥か彼方に浮ぶ灯台のあかり、そんな歓喜の感情を揺さぶる優しいオレンジ色のキャンドルの炎が、まるで宝石箱をひっくり返した様にちりばめられたカラフルなフルーツの山脈をそっと照らす。
遠くに望む冬のマッキンリーの頂上かと見誤る断崖絶壁にはあまーい生クリームがたっぷり。
実にうまそうだ。
まるで満月と確かに数字の様なものが中央部分に突き刺さっておりますが、明らかに私の年ではなく、また、そのキャンドルの数も6本と明らかに現在の私とは懸け離れておりますが、このパーティーは明らかに私のパーティーなのでありました。



「いやっ・・・これ取れねーな、うーーーん、ひっぱっても、くそーっ」

このパーティーの席、私の向側には是川の中年ハリ-ポッター岩SOURが座り、なにやら得体の知れない物体を懸命に押したり引っ張ったり、それを興味ありそうでなさそうに覗き込む、まるで手前のワインボトルのコルクキャップと化したMKK。

「この前僕火星に行って来たんすよ。」
唐突にキュウティクル的天使の輪を輝かせながら岩SOURが言った。

「はっ、火星って・・・なにしに行ったんだよ・・・そんな遠くまで」
しこたまワインを飲まされ、目の前の物体全てがふたつに重なって見えている私は適当に質問してみた。

「何しにって親戚ん家に決まってんじゃないすか、姪っこが結婚したんすよ。そん時はポン酒飲んだ飲んだ、キリッと辛口純米酒・岩沢酒店。・・・そん時に火星のおじさんからこれもらったんだよね、これ。なんか、地球が何らかの危機的状況におちいったら使えって言われたんだけど、どうやって使うのか説明書はいってねーかなーとおもってさ。うーーーーんこりゃ」

「・・・・・・・・・・・、そこまで飲んでくれてありがとう、うれしいよ」

こうして楽しい夜はだんだんと更けたのでありました。