2009年9月

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「そろそろハ-レ-なんか・・・欲しいな・・・」
恐る恐る、しかもなにげなくさえずってみた。
「あそっいいんじゃない!」
あっさりとした拍子抜けの返事がカミさんから返ってきた。
おそらくプラモデルか何かと勘違いしているに違い無い。しかしそれはそれでOKだ。
物本を買ってしまって後でなんだかんだと言われても「買っていいって言ったじゃん!」と言張れる。
これはグッドチャンスではないか。

洋服の展示会のあった9月のある日。
私は超高速で商品サンプルをチェックし、たっぷりの空き時間を無理矢理作り、早々にパソコンチェックを入れてあった江戸川の「ラック・ローズ」さんへと向ったのでした。
道の途中、先程チェックして来た洋服の商品郡はすっかりと頭の中から消え去ってしまっていた。
大丈夫かな?まぁしっかりと写真は撮ってあるから帰ってからもう一度真面目に見直そう。うん、うん!


おお~ここだ、ここだ!
かなり大きなショップではないか。店内外に多量のハ-レ-が並ぶ。


おお~このショベルのボバーはいいな~、かっこいい!
えっ売約済み、そうか残念だ、売れてしまったのならしょうがない。
他を探すか。


おおこれはどうだ。このタイプならさっきのボバーにフロント回りの改造だけで近いものが出来そうだ。どうやら売約もついてはいないようだし。
しかもエボだしド素人の私には打ってつけではないか。
「これっていい感じに作ってもらえますか?」
「もちろん出来ますよ。かっこいいやつ作りますよ」
そういってニコリと微笑んだのは、急遽私の担当となった藤脇氏。
彼は広島出身で気のいい21才。


彼、藤脇氏のパンヘッド。
フルオリジナルの稀商物で値段を聞いた私は2歩程後ずさり、「そうじゃけんのう!」と本場の広島弁に3歩程後ずさってしまったのです。
この後、跨がせてもらったのだが、これがなかなかの座り心地の良さ。すばらしい!


メカニックの彼は寄寓にもむつ市の出身との事、かなり近場であります。
この後、共通の話題でひと盛り上がり。そしてさっきのエボにどんなふうに手をかけよかと相談タイムとなった訳なのですが・・・・・。

さあっこの後どんな展開へと進んでいったやら、こう御期待であります。

ある晴れた朝、テレビのスイッチをONにすると衝撃的な映像が飛び込んできた。
海女さんがかわいい・・・・・のだ。
何かのイベントにタレントが挑戦しているのだろうと気もそぞろに眺めていると、なにやら本物らしい。
まさかと思い寝ぼけ眼をふた拭きして凝視。

「うわぁ~なんてかわいい人だ~しかも本職の海女さんなんだ、それに久慈って~とても近いじゃないか~藤川市議といい、この南部地方は美人の宝庫ではないか」
伝統の海女を絶やしてはいけないと健気にも勤しんでいるその姿に感動。

そう言えば先日友人がこんな事を言っていた。
「俺は久慈の千草のラーメンが一番好きだな~あのチキンスープが最高なんだよ!」
ラーメンに目のない私の心の奥底にこのフレーズがしっかりと残っていた。
いつか機会があったら、ぜひともそのラーメンを食ってみたいと思っていた。
そうなのだ、これが絶好の機会ではないか。
と言う訳で次の休日、バイクでビューンと向ったのでした。

AM11:00 ー久慈駅に到着ー
千草のラーメンが先か、海女さんが先か、迷った末に海女さんに決定!
しかし、ここから何処へ向えばいいのだ。さっぱりと方向性を見失った私はこちらに向って歩いて来る老婦人に尋ねてみる事にした。
「あっすみません。怪しいものではありませんので御安心を。実は最近テレビで見たのですが、この地に伝統の海女漁があるとの事で、ぜひそこに行きたいのですがどちらへ向えばよろしいのですか?」
私はなるたけ丁寧に言葉を選んだ。
「はっはっはっ~な~にまだ、あの若い娘に会いに行ぐんだべ。その道路を左に行って、橋を越えたらまだ左、それを真直ぐ行げばいいよ。ちょっと遠いよ」
どうやらすっかりとおみとうしの様であった。
「いやいやいや、おかあさんもなかなかどうしてお若いですよ。ありがとうございます」
私はしっかりとお礼を言ってアクセル全開向ったのであります。


切り立った岸壁にか細い道路が沿うように設けられていて、かなり危険な臭いが漂う風景だ。
相互交通なのだが車一台しか通れない所もちらほら。落石なども危惧される険しい道程だ。


そんな険しく立ちはだかる環境をもものともせず突き進む事数分。目的の海女の館が見えてきた。
とても素朴な佇まいでなんだか心が和む。顔だけ出して写真を撮る海女パネルにちょっぴり心がそよいだが、いい年こいてやっぱりやめておこう。
海側に誰もいなかったらそのまま帰ろうと軽く考えていた私は、なにげにこの建物の裏側へと歩を進めたのであります。


「えっまさか!彼女達がそうか!え~しかも撮影中!」
私はラッキーでありました。ちょうどテレビの撮影が行なわれている様子。
彼女達に偶然にも会う事が、すぐ側にまで近付く事が、出来たのであります。


私は幸せものであります。
さりげない自然な姿をキャッチする事が出来ました。
しかしであります。この日の気温はまあまあ高めではあったのですが、今は9月、きっと海の水は冷たいはず、しかも濡れた衣装のままでの作業はなおさら体温を奪って行くのです。
ちょっと寒そうに見えたので、カゼをひかなければいいがと思った次第であります。
撮影の邪魔になるのもなにかと、数分でここを後にしたのでした。


再び久慈市内に向けバイクを走らせ「らーめん千草」へと到着。
きれいな町並みに、なかなかモダンな店構え。
さっそく「ラーメン&小ライス」を注文したのです。


うわぁ~うまそ~!
ズッズッズッズーーーーあ~うめ~!トリダシが強烈にきいててうっすらと浮ぶトリアブラが良いコクを出している。
奴の言う通りこれは食いに来る価値がある味だ。
良かった良かった体もホカホカにあったまった。スープまで完食。

本日、私は、なんとふたつの幸せをゲット出来たのであります。
本当にナイスな一日でありました。
この幸せがいつまでも続いてくれますよ~にと願い、とっとと帰途についたのであります。

しかし、海女の彼女達、あんなにいろんな人々が押し掛けて撮影だとか何だとか、平穏な生活が一変したんだろうな~大丈夫なんだろうか。
つられて行ってる私も悪いが、なんとか乗り切って欲しいものだと切にねがったのです。
後、十年もしたらまた行ってみたいね。


笑顔で頑張る彼女達に千草のあの温かいラーメンを食わせてやりたいものだと思った、名も無きおっさんでありました。

去る8月31日、私は誕生日を迎えた。
ひとつの節目、折り返したその先にあるもの、そう、とうとう還暦前の大台の位置にのったのであります。
金、銀、銅の色付きメダルは取れなかったものの、かろうじて入賞は果し、燦然と輝く表彰台のななめ後方の薄暗い隅にある小さな表彰台の方に仕方なく乗っかったみたいなイメージ。
暗くややこしい年令であります。

ソールブランチカフェでひっそりとちびちび軽~く酒でも飲もうと決めていたので、暗闇に包まれた小道をとぼとぼとひとり向ったのです。
するとなんと、びっくり仰天!
みんなが集まってくれているではありませんか。
それこそ、いい年こいて危なく感涙にむせぶところでありました。いや~うれしいものです!


こんな素晴らしいケーキをもらったのは小学生以来、思わず顔を突っ込まなければと芸人根性がふつふつとわくも「顔だけは突っ込むな、食いたいから!」の一言で断念。


ソールブランチカフェのタクちゃん、ミツエさん夫妻からの料理のプレゼント。
輝かしいインゲンでのの文字。とても崩せないと思っていたら、同席の梅ちゃんが簡単に崩しておりました。
たやすいものですね人生って!


ステテコをはかせたら日本一と噂の高い「岩SOUR」夫妻からはスポーツ用アンダーウエアーセットを頂きました。
ふたりイイ笑顔ですね~。
しかしこの数時間後「岩SOUR」はろれつがやや怪しくなったのですが、カラオケにて「居酒屋」を夫婦で熱唱しておりました。
やるやるとは聞いていましたが、やっぱりなかなかやる夫婦です。


写真右端のジンが野菜たっぷりの料理にハシを付けて言ったのです。
「梅さん、このキュウリなかなかうまいっすよ」
「はっ、お前はアホか!これはズッキーニだろ。こんなのも知らね~のか。」
写真まん中の梅ちゃんがあきれ顔で突っ込んだのです。
「だってしょうがないでしょ、そんな事言ったって食った事ないんですもん。だいたいこんな物普段食わないっしょ。それじゃあこのアンチョビは梅さん解るんすか?」
ジンは負けじと梅ちゃんに次の食材を提示しては食って掛かった。
しかし、私はそれを見ていて背筋が凍り付くのを覚えたのです。
なぜなら、奴は、明らかに「アンチョビ」と言いながら「オリ-ヴ」を摘んでいるのです。
そのスライスされた黒い「オリ-ヴ」の破片をハシに挟み、まるで対決に勝ったかの様な満面の笑みなのです。
案の定梅ちゃんが吠えた。
「おい、お前はやっぱりアホだな。久々に大学出が入ったと思ったらこれだ。それはオリーブだろ。お前の食生活はどうなってるんだ。よくピザに入ってんだろ。良く見てみろよ、まったく!」
ジンはこの一件で撃沈してのでありました。この後は静かにちびちびと・・・・。

そんな梅ちゃんもよくこんな他愛無い事をいっています。
なんで世間は「松・竹・梅」なんだよ。なんで松が上で梅が下なんだよ。納得いかねーな!今度から「梅・竹・松」にしよーぜ。
な~んて、竹の事はまったく眼中になく、深く考えてもいない梅ちゃんでした。

写真左端はタクちゃんです。
料理も一通り作り終わり私達と合流です。そしてやっちまったのです。
ブラジルの強い酒をグイグイと。かなりヘロヘロになっております。
確かにろれつもれろれろであります。普段のしっかり者のタクちゃんしか知らない人は必見でありますよ!
次の日大丈夫だったかな~!
スタッフの皆様からはバイク用にグローブと大きな愛を頂いた次第です。
本当に有り難うございました!
こんなにして頂いてもう思い残す事は何も有りません。

でもまだまだ死にませんよ!えへへ!

洋服の展示会などで東京へと頻繁に向うのですが、そんな時はやはり新幹線を利用するのです。
八戸発着になってからは随分楽になったものです。
私がその展示会に向うあたりは、やはり他のショップの方々も同じようにその時期に展示会へと向うので、かなりの確率で知っている顔を駅構内にて見かけるのです。
その新幹線のチケットについてはいつも旅行会社に頼んでおきます。
私としては二人がけの窓側、つまり、席ナンバーで言えば「E」席。その指定のみを告げ後はどこでも空いている所があればと注文します。

先日は初めて1号車1番「E」でありました。
なんのことはないのですが、なんだか根拠のない漠然とした喜びが沸いて来たのは事実です。
ただそれだけです。



こちらは初夏を向かえた頃、6月のチケットです。
都内での展示会を終えやや早目の17:56東京発の「はやて29号」のチケットです。
汗を拭き拭き指定である「7号車6番E席」へ辿り着くと、そこには既に先客が座っておりました。
「すみません、そこは私の席なのですが、変わってもらえますか」
私はその失礼な輩にはっきりと言い放ったのです。
「え!何言ってんの、ここは私の席ですよ。あなたこそ自分のチケットをもう一度確認してみた方が良いんじゃないですか?」
「いやいや何を言ってんですか、私のチケットはこれですよ、おたくのやつも見せて下さいよ」
と、一緒に並べたのがこのショット。
まるっきり一緒ではありませんか。
[はやて29号・17:56発・7号車・6番・E席]
「うわ~こんなことってあるんですね~へ~めずらしい~」
な~んて言ってふたり笑いあったのですが、よ~く見ると日付けに余分なものが・・・・・・
今日は「6月9日」のはず、私のチケットの日付けには余計な「2」がついた「29日」ではありませんか。
まだ20日も先のチケットだ。
「ひぇ~~~~~~~~~~!」
私の惨敗でした。
早々に車掌を呼んで空いてる席を探してもらう始末。
だけどなんだかこんなちょっとしたアクシデントに嬉しい感覚!ただただぼんやりと過ぎて行く日々への刺激剤だ。
「えへへ、こんなことってあるんですね~めずらしい~」
再び先客に二言目を告げ、私は新しい席へと意気揚々と向ったのでした。

すっかりと眠気もさめ、読書の進んだ旅でありました。めでたしめでたし!