2010年3月

3



3月半ば恒例のこのドカ雪もすっかりと姿を消した。
厳しい寒さの2月を乗り越えホッと一息着いたこの時季に必ずやってくるやっかいもの。
このずっしりと重いやっかいものをきれいさっぱりと片付けた後に陽光眩しい春がやってくるのだ。
前前回に紹介していた私の植物達も増々勢い良く成長している。

どいつもぐんぐんと背を伸ばし、そして葉っぱの数を増やし大きくなっていっている。
日に日に明らかに春に向って膨張している。

ハゼの木なんかは一番変化がわかる。黄緑だった幼い葉っぱは今や薄茶にまで色をかえ天へと向って成長し続けている。頼もしいかぎりだ。
しかし、元気の無かったケヤッキーはやはり元気が無い。
小枝に指先が軽く触れただけてポキッと折れてしまったりする。
やはりそれは乾ききっていて柔軟性に欠けているからに違い無かった。
水分を吸収出来てはいないのだ。
昨年の晩秋に葉を落としてしまったのは、冬が近付いて来たからでは無く、力尽きたからだったのかもしれない。
私の管理ミス・・・・・・残念だ・・・・・無念だ。


「んっ!・・・なに・・・なんだあれは?・・・あのちっこいのはなんなのだ・・・」



「まっ・・まさか・・・新芽?・・・お前は、お前は生きていたのかあああああっ
すごいぞ、すごすぎる、あまりにもすごすぎる。」
ひょっこりと立ち上がったそのピンク色の幹の両側に2枚だけ形成されているあのちっぽけな葉っぱには、はっきりと見覚えがある。
昨年の夏勢い良く成長していたころ全体に茂っていたその葉っぱそのものではないか。
あまりの感動に私はその場に立ち尽くしてしまっていた。

もうだめかもしれないとばかり思っていた。だけど、そう思っていても私は水をやりつづけていた。
もしかすればとも思いつつ・・・。


2010年3月、ケヤッキー2世誕生!  

「お前はたいしたものだ、ばんざ~~~~い!」

クロの店を出てホテルへと辿り着いたのは午前5時を少しばかり回ったところだった。
この時間まで飲んでいたのは何年ぶりだろう。近ごろでは午前12時を越えて起きている事は珍しくなっている。

死語ではあるが、「バタン・キュー!」であった。

目が覚めたのは8時、酔いの方はまったく覚めてはいない。
このまま再び眠ってしまってはまずいとテレビのスイッチをオンにし、しばらくベッドの中でまったりとすごした。
朝食の券を1000円で買っていたのだが、とてもじゃないがそれらを胃は受け付けないだろう。
チェックアウトは確か10時のはずなので9時には起き上がりシャワーを浴びた。
これで頭の痛みもやや治まった。

予定ではこのまま真直ぐ八戸へと向うつもりでいたのだが、ホテルを出たところで考えた。
「そうだ、せっかくなので立ねぶたを見て行こう」と。
前回見に行った時は、重度の2日酔いに悩まされ、立ねぶたの館の1Fロビーにあるトイレしか目にしていなかったのだった。
よしっ行くぞ~~~~~~!


さすが建物も大きい、まるでガンダムの要塞ではないか。
まるで初めて目にする建物のようだ。二日酔だった前回の記憶は曖昧すぎて話にならない。

「ヤッホー!」とでも叫びたくなるくらいに大きい。大きすぎで首がいたい。
これが今年の新作の「またぎ」モチーフのやつだろう。確か先日テレビのニ?スでやっていた。
それにしても実物は物凄い迫力だ。

今朝は早かったのでお客は私だけだったのだが、そろそろ観光客が入って来たようだ。
人の大きさがわかると増々立ねぶたの大きさが伝わってくる。どでかい。

こちらが大きさの対比。
右が弘前の「ねぷた」、中央が青森の「ねぶた」、そして左はじが「立ねぶた」。どれだけ「立ねぶた」がでかいか一目瞭然だ。
いやいやすばらしかった。
「今度はぜひ祭り中、これらが動いている時に来たいものだ。」
そう思いながらスロープをつたい出口付近に差掛かったあたりで青森が産んだスーパースターにばったりと遭遇してしまった。

「あらあら吉幾三さんではありませんか。最近ではジョージさんの還暦祝いに姿を表している所をテレビで拝見しましたが、それからさっぱり見ないと思ったらこんな所にいらしたんですね。」
「こんな所って、悪かったなこのやろ~、何がこんな所だ、おおきなお世話だこのやろ~!ところでど~だもおもしろがったべ。これは高さが22メートルもあるんだぞ、すごいだろ。お~いかけて~~~~ゆきぐに~~~ってが!」


感動のあまりに写真を撮らせて頂きこの立ねぶたの館を後にしたのであった。
「連休っていいものだ。」
明日も休みだしどれどれ途中温泉にでも入って行こうかな。



ピリ辛の冷気が五所川原の夜を飲み込んでいた。

縁遠かった連休という宇宙を久々にゲットできた私はふっとK二号(コラムではK二号で通っているが本名を黒川と言い、ニックネームはクロである)に会いたくなった。
思えば高専の学生だったクロはすでにティーバードでバイトに入っていた。
卒業後は名だたる大企業に進む同級生達を後目に、あろう事かここティーバードに入社してくれたのである。
ありがたい。
数年間のティーバード生活の後、自分探しの旅にとなぜかオーストラリアへと渡った。
目つきの悪いコアラと宿無しのカンガルーに可愛がられ、覚えた言葉は「CAN I HAVE A BEER」だった。
数年後にひょっこりと帰国したクロは生まれ故郷にこじゃれたプールバーを開いた。
オープン当時にいちど行ってから行ってはいない、音沙汰も無いし元気でやっているのだろうか、なんて親心がふつふつと沸いて来たのだった。


確かこの大きな通りを渡ったところの、あの小さなビルの2階がそうだと思うのだが。
名前は・・・なんだっけ・・・う~んと・・・そうだ・・・「クロロック」だった。

おお~なかなか洒落たフロアーではないか。まだ時間も早いと見えて他のお客はいないようだ。
私は中方向へと歩み出た。

カウンター内に佇む男がひとり。
このシチュエーションで男がひとりとくれば、それはどうみてもクロ以外には考えられない。
クロはお客の入って来る気配すら感じ取れなくなっているのかと意外に感じた、と同時に「もしかして老」な~んて思ってしまった。

「おいおい、な~にそんなところにつっ立ってんだよ。着いたぞ~~~~~!」

驚かしてやろうと、私は大きな声で叫んでみた。

「うわぁ~~~~お前は、お前は、誰だ~~~って、ゴリポン?ゴリポンじゃないか、なんで、なんで、お前がここにいるのだ。」
驚かすつもりが私の方がすっかりと驚かされてしまっていた。

「えへへ、びっくりしたでしょ。この為にゴリポン呼んだんですよ。ドッキリ大成功っすね。それにしてもリアクション、年のわりにオーバーっすね・・・」

相変わらずのベタな演出、実に楽しい男だ。




1時間を掛けてこの場に駆け付けてくれたゴリポンとその女房ともえちゃん、この日たまたま飲みに来てくれた美容室のオーナーである睦美さん、そしてこのにやけ面のクロとキリリと冷えたうまいビ-ルで乾杯した。

旅のそら、旧友たち、うまい酒、これ以上の贅沢はないな~と全身がざわめいた。

他のお客もぞくぞくと入店して来ては店も活気が出て来た。
せっかくなので久し振りにビリヤードでもと言う事になり私達はテーブルへと向った。

実はここ1週間、奴は店を休んでいた。
と言うのも、原因不明の高熱が続き体調が優れなかったらしい。
今夜もまだ本調子ではなかったが、ややこの雰囲気を楽しめてもいるように見えた。
酒がきいて気持ちが高ぶっているのかもしれない。このまま快方に向ってくれればと願うところだ。

それにしても良い店だ。

「ビリヤード、今度は体調のいい時にガチンコ勝負だぞ!」