2010年10月

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待ちに待った奴らがとうとうやって来た。

どんな姿をしているのか、どんな髪型なのか、どんな奇声を発するのか、どんな我がままを通すのか、どんな臭いをまき散らすのか、軽く笑ってくれるのか、などなど、私にはまったく見当もつかなかったのであります。
あれからどれくらいの日数が経ったのでしょう。
そんな一連の思いも何処かに消え去ってしまっていたある日、奴らは忽然と一家総出で姿を現したのであります。


世界で一番幸せなのは私達なんだろーね、オーラをまき散らしている山端一家の図

どっちが(新太・あらた)でどっちが(元陽・あさひ)なの?

こっちが(新太)であっちが(元陽)ですよ。

はぁはぁ、そっちが(元陽)でこっちが(新太)なんだね、するとそっちが泣けばこっちも泣いて、こっちが泣けばそっちも泣くんだね。

そうそう、そっちもこっちも泣くと、もうわたちも泣いちゃいますよ。


こっちがあいつで・・・・

こっちがあいつ・・・・・

えっ、どっちがどっちだ?
しかも寝ていて増々どっちがどっちなのか解らない。

山端一家は10分もいただろうか、そろそろ自宅へと戻る時間らしくさっさと車へと乗り込んだのです。
車の後部座席には真新しいベビーシートがふたつ。


こっちを先にセットして・・・

次にこっちをセット・・・・・

ん、こっちがあいつでそっちがこいつか・・・それではお前は誰だ。

最後の最後までこの兄弟は眠っていたのです。
とうとう帰る時まで目をあけてはくれませんでした。かわいいのは重々解ります。
だけど、どっちが(新太)でどっちが(元陽)なのかまったく解らなかったのであります。
今、改めて写真を見直してもぜんぜん解りません。

何年かしてやっと特徴的な部分を見つけて、それを見分けるポイントに出来る様になると良いのですが、ただ、その頃には私のボケの方が進行していて、やはりどちらがどちらか見分けられないといった珍事にならなければとやや情緒不安定な私なのでありました。

HAVE A NICE LIFE !


AM5:30

ピッピッピッピッ・・・・・・

目覚まし時計の乾いた発信音が起動前の鼓膜を揺り動かし、うっすらと目が覚めた。
なんの違和感も無い。
なぜなら、毎日の事だから。

未だ薄ぐらいが、どうやら雨ではないようだ。
早速、ナイロンのオーバーパンツとパーカーに着替え玄関の扉を開けた。

まずは首を前後左右に屈伸させ全身をリラックスさせてから準備運動に入る。
次に上半身を前側に倒す前屈運動に入った、そんな時だった。
私の足元に何か得体のしれない無気味なものがあるのに気が付いた。



「なんじゃっこれは?」



見るからに気持の悪い物体ではありませんか。ミル貝の一種か?
なんて思ってもみたのですがここは草地、海ではありませんからそれは違うでしょう。
根元の方に何やらベイジュ色の袋状のものがあり、どうやらそれからニョキニョキと伸びている様子。
これはキノコの一種か?うん、そうかもしれない。

キノコと言えば秋。
秋と言えば強引でありますが「新ソバ」
新ソバと言えば、やはり「おきな」じゃありませんか。



早速、
ズズズズズズズズズズズ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!

そんな、ことさら何も無い、平穏そのものの、秋の一日でございました。

まだまだ依然として昼は暖かい。
10月だと言うのにいったいどうしたのでしょう。
私は未だにTシャツで仕事をしている始末、洋服屋だと言うのに、、、。

しかし、季節は完全に秋。
草花は私と違って何ぶん賢いもので、しっかりと季節を捕え、そして全身を変化させています。
草花はどこで季節の変化を察知するのでしょうか、不思議でなりません。



今年で3年目を向かえた庭の仲間達。(山桜は2年目)
それぞれがこの秋を体感し、それぞれが自分なりの冬支度に入っている様子。



山桜は春から枝がぐんぐんと伸びて横に成長しました。
葉っぱはほぼ落ちてしまいましたが、また来年咲くだろう白く可憐な花が楽しみです。



黄金ケヤキは今年の冬に突然枯れてしまい、かなり焦りましたが、春先、その根元から小さな芽が出て来ては成長を続け、今では以前の2倍にまで背丈が伸びました。
しかしこのままでは盆栽としてかっこいいものではありませんね。来春あたりには私の手によるカットを考えています。
その為には少し勉強しなくてはなりませんね。



ハゼの木は今年もきれいな真紅に色づいてくれました。
今春、水やりがやや多くなってしまって、1度弱りかけたのですが、なんとか持ちこたえてくれて、ほっとしているところです。
水やりのタイミングはそれぞれが違うので、未だにこれといった確信のもてないありさまで、悪戦苦闘中といったところです。
それでも、よくみんな枯れずに頑張っていますね~大したものです。

さあっ、来春はとうとう植え替えの時を向かえます。

「山野草は・・・うちではちょっと植え変えは出来ないですね~土もないし~」

と、2軒の花屋さんに断わられました。
と言う事は、必然的にこの私、不器用ながら私がやらなくてはなりません。
胸中不安が渦巻いておりますが・・・そうだ、やつが、やつがいる。
やつならきっとやってくれるはずだ!



よろしく、東・京一朗!

君はいったいどっから飛び出してくるんだい、相変わらずエキセントリックな男だ!
確か君は代々木の高校に在学中、鈍く光る剣山と矢がすりの着物と針をさす足のしびれに憧れ、華道部に在籍していたはずだったね。
そこでつちかった頼り無い知識を私に分けてくれないか。君だけが頼りだ・・・・・・・?

いや、やっぱ、自分でやろっ。
岩SOURが変な物を履いてきた。
どう見ても変だ。
私の中ではありえない履物だ。

それは5本指のスニーカー。
確かに5本指のソックスなら今ではポピュラーな代物ではあるのだが、スニーカーってのはどうなんだろう。かなりの違和感が付きまとう。

次の日、また岩SOURがそれを履いて来た。
来店するたびにそれを履いている。来店するたびにそれに履き替えている訳ではないだろうから、おそらく毎日それを履いているのだろうと推察できる。
いいのだろうか?

「それってどうなの?」

「これ最高っすよ。これを履いて歩くと、人間本来の歩き方になるって知ってた?
普通のスニーカーや靴なんかで歩く時って、踵(かかと)から地面につくでしょ。これだと痛くてそれが出来ないの、自然に足のウラ全体を使って歩くようになるよ。小指ってどう?ちゃんと動く?」

そう言われてみれば、私の小指は薬指に寄り添ったままぴくりとも動こうとしない。

「口だけはひん曲がるけど小指の方はいくら頑張っても動かないな」

「でしょ、ところが、これを履くと動くようになるんだよね~!」

そう言うと、次ぎに岩SOURは「あ~忙しい忙しい」と発し、スキップをしながら帰っていった。
それにしても美しいスキップだ。しかしやつはいったい何しに来たのだろう?またこれから「夕暮れ市」に「ゆで卵」、もしくは「味付こんにゃく」でも買いに行くのかもしれないな。

後日、誕生日も今は昔となったとある昼下がり。
岩SOURから荷物が届いた。





そう、例の奴が。
私の誕生日に、一度経験してみろと言う事で、岩SOUR夫妻が買ってくれたのであります。
「これはこれは、ありがとうございます。ついでにソックスもお願いしますよ」

早速履いてみようとチャレンジ。
だが、これがなかなか履けないのです。簡単ではないのです。指が広がらずにまったく履けないのです。
汗し苦闘する事20分、やっとの事で履けた頃にはぐったりと倦怠感が全身を包んでおりました。


どうです、この見事なまでの艶かしさ。
なんだか足指1本1本に力がみなぎる感じ。やつが言ってたように、これっていいかもしれない。
歩いているとまだ変な感じだが、慣れると全部の指を自在に動かす事ができるようになるかもしれない。

「ありがとう、岩SOUR、ありがとう、岩SOUR女房」

来年の「うみねこマラソン」、手加減はしませんよ!