北へと・2


「もう行くの、たった今来たばかりじゃないか」
ふいに子馬が言った。
「うん、みんなの元気な顔も見れたしそろそろ帰るよ、日帰りだからね」
私は軽い笑顔でそう答えた。
「そうか、そうだよね、今から帰っても3時間はかかるもんね。仕方ないか」
子馬はひとくち芝をはんでから残念そうにそう言った。
「また近い内にくるよ、熱湯にやられたみんなを連れて、みんなも元気で、それじゃあ、また!」

彼等に別れを告げた私はそのエリアゲートを抜け、市街地へ向う路線へとバイクを走らせた。温暖な海風と潮騒が心地良い。
小さな商店街を抜けたあたりにその店はあった。

海峡食堂って、映画にでも出てきそうなネーミングではありませんか。何となくその雰囲気に引かれたのと、ちょうどお腹も空いてきたところだったし、私は入ってみる事にしたのでした。

テーブル席に着くと眼下に大海原がひろがり、前席の親子が海鮮丼を上品にぱくついているのが見えた。どうやら納得の味らしい。
ちなみに、向って左側の窓のまん中あたりにポツンとある黒い点の様なものは大きな蜘蛛で、こちらもこの時捕まえた虫をうまそうにぱくついておりました。
メニューをざっと見回した私は、海鮮かき揚げソバを注文。このロケーションで刺身系は絶対うまいはずなのは解りますがあえてソバをチョイスしたのです。
待つ事10分くらい。

なんとも上品なこしらえ。
ソバの上に、みだらなかき揚げがどかんと乗って来るものだとばかり思っていた下品な私にとって、これは衝撃的な品の良さでありました、しかも2個。
そしてこれがまた海鮮ぎっしりサックサクでうまいのなんのってこんちくしょう。
旨味の濃厚スープに腰のしっかりとしたプリップリソバが歯応え満点パパ。
そのまた旨味スープをすったかき揚げがなんともデリーシャス&ワンダーフル。
これ、間違い無くう・ま・い!
あっと言う間に完食、もう一杯行けそう。
旅での食事、大当たりはそうそう無いけど、今回はグッドでございました。

帰り道。
峠から原発がちらりと目に入りました。
事故が無い事を、祈るばかりです。