2010年7月

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名前は「アキ」。
料理店「ハーディーガ-ディーカンパニー」のスタッフとして仕事をしてもらっていた時期があったが、数年前に突然と本格的に料理の修行がしたいと言い出し、そのまま大阪へと旅立っていったのでありました。
あれからどれ位の月日が流れたのだろう、健忘症の私にはもうとっくに指折り数える事はままならなず、考えれば考える程輪郭がぼやけて行く一方だ、そんな時は一時考える事を休みましょう。
そうそう、その「アキ」が突然と店を訪ねて来てくれたのです。

「おお~アキか、アキじゃないか~、いやぁ~元気そうじゃないか、久し振りだな~」

考える間もなく私の口から大きな声が飛び出した。

「エヘヘッこんにちは~、お久し振りで~す。いまだに大阪にいるんだけど、ちょっとだけ休みがもらえたので帰って来たの。やっぱり古里はええね~」

おおっとさりげない大阪弁・・・しかし何年経過してようが、アキはあの頃とちっとも変わってないような気がする。いやいや、気どころか、あの頃のまんまではないか。
ちょっと気取った顔を作ってはいるが、ぜんぜん若い、ぜんぜん年とってない。
もしかして・・・妖怪だったのか・・・お前。

「今日はね、私のお母さんがここに来てみたいって言うから一緒に来たんだよ。」
屈託のない素直な笑顔も変わりない。

「ちょっとあんた、早く紹介しなさいよ」
元気なお母さんの声が後ろで響いた。


「はぁ~い」
振り向きざまにアキの顔がちょっとゆるんだところをキャッチ。
もしかしてお母さん・・・も若い・・・いくつなのだろう、初対面ではあったが私は勇気を持って尋ねてみた。

「お母さんってお幾つなんですか?」

「私っ、私は60才よ」

ひえ~~~~~~~~っ!
とても60才には見えない。決して見えない。動きも軽やかだし。頭の回転も早い。
おそらくアキは遺伝だろう、DNAが若さを保っているのに違いない。降参です。

それはそうと、アキとは不思議な縁がある。あの頃、大阪に旅立った時だった。
大阪市内、あちこち料理屋を探し回って、やっとの事で探し当てた店があった。
そこにはなんと私の知人がいたのである。この偶然には正直驚いた。
そして今回初めて知った事なのだが、前回のブログで紹介した「ラウラ」の三浦氏とは、アキのお兄さんが幼い時からの大親友だったと言う。
どうやら世間には何か目には見えないえにしの糸が張り巡ぐらされているに違いない。
とても凡人には計りしれない・・・ものです。



こうして久し振りに一緒の楽しい時間を過した親子はこの後仲良く家路へとついたのでありました。

「大阪か~~遠いな~~暇が出来たらまた来いよ、みんな待ってるぞ!」

7月17日(土)~7月20(火)の4日間、ラウラ・三浦氏による作品展示会が開催された。
場所はいつものNHKではなく、今回は自身のスタジオ兼ショップにて行なわれた。
これがまた風光明美な環境でうらやましいかぎりだ。

この展示会中にはどうしても時間が取れなかった私は、無理を言って休みを取っていた翌日に出掛けたのであります。
この歴史感溢れる古くからの民家を改造した場所が彼のアトリエ。
裏には川が流れ元気な樹木達が育っております。

休み中にもかかわらず、巨大なティキと共に笑顔で迎えてくれた三浦氏なのでありました。
このフロアーにはセンスの良いハンドメード家具がずらり、そして売約済みのシールもずらり。
やはり展示会に顔を出すのは初日にかぎるね。



隣のガレージには額ものがずらり、今回はネイティブ系の図案が中心になっています。
細かい手作業から生まれた作品はどれもいきいきと輝いております。
そしてそのガレージを過ぎると裏庭へ、おお~そこにはなんと虹のトンネルが・・・粋な演出だ。

うわぁ~庭もかっこいい~思わず感嘆の声がもれてしまった私なのでありました。
家具やオブジェの他に造園もできるとは素晴らしい。ガーデンテーブルにベンチ、そしてガラスブロックのはめ込まれた木製の壁もお手製。

井戸のある風景。
これは60年以上清水を出し続けているらしい。もちろんモーターなどで汲み上げているのではなく、あくまで自然に湧いているのだ。
ひと口いただいたがキリリと冷えてスッキリとした飲みくちだ。
まるで極上辛口の日本酒の味わい、さらりと身体に染み込んでいく感覚は清い証拠だ。数日前もホタルが飛び交ったとの事。
昔、昭和の頃の暑い夏、祖母宅の井戸では定番のスイカをよく冷やしていたものだ。
と、懐かしさが込み上げてきたセンチメンタル的私なのでした。

こう言った良い環境から良いものが生まれて来るのですね。
残念ながら私の気持をグッと引き付けた逸品は既に売約済みになっておりました。
次の展示会は絶対に初日に行こうと心に決めた瞬間でありました。

さあっ今日から「ラウラ貯金」を始めようかな、出会った時の為に!
この日、早朝4時、目覚めた私。
なぜなら目覚まし時計をその時間にセットしておいたから・・・。

かなり前、そうロングロングタイムアゴー、私はなぜか「宅地建物取引き主任者」の資格を取得していたのです。
その頃はまだまだ鉛筆を倒して答えを導き出していたもので、「取り合えず」といった感覚で試験を受けた次第です。
この免許証も運転免許証と同じく、数年に一度といった形で更新の為の講習があるのです。
ただ、運転免許証とちょっとだけ違うのが、その講習時間の長さ。
それは朝の9時から夕方4時までといった過酷な長丁場なのです。

講習は青森市で行なう為、私は6時に八戸を出発。
この日はかなりの靄がかかっており、ライトが無ければとても危険な状態、私の頭の中も未だこんな深みの中であります。
午前8時30分
会場である「ホテル青森」に早めに到着。
この頃にはすっかりと晴れ上がり、大きな空はピーカンに。
こんな気持のいい日に「カンズメ」とは・・・・。

大きな会場には約250人が終結。

配られた参考書を開いた瞬間、善良な私を悪らつな睡魔が襲う。
お茶を飲んでも天井を見あげても、ましてや大きな会場を見渡してみてもなんのその、まぶたに限り無い重力がのしかかる。
必死でまぶたを持ち上げようと試みても非力な私のまぶたはノックアウト寸前。
朦朧とする意識の中、身体が前後にふらつきながらも、何とか午前中をクリアー。
まるでダメージをおったボクサーがゴングに助けられた感じだ。

おお~前回よりもなかなかリッチな弁当ではないか。
さらりとたいらげた、が、私にはちょっと足りない。女の子には丁度いいかもね。

午後は毎回お馴染みの顧問弁護士先生登場
そしていつもの一言
「私はあちこちの顧問を引き受けておりますが、なかでもここ青森県は一番好きなところです。なぜなら、ここはすごい、これだけ長い時間講習を受けながらも、眠る人がひとりもいないですもんね!・・・さあ、それでは始めましょうか」
会場はかるく盛り上がりをみせ、そして講議が始った。

ジョークながら眠るに眠れない状況に追い込まれながらも、地獄の睡魔大王がやってきては軽くいなされた。
もうなにをやっても身体が動かない。まぶたが開かない。首が折れ曲がったままもとには戻らない。

ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

記憶は無く、講習は無事終了!


「さらば、ホテル青森よ、5年後また来るよ、たぶん」

なんでだろ、本を開いた瞬間から睡魔が襲ってくる、まるで中学生の頃のまま。
そしてまた、不思議と本を閉じた瞬間からシャキリと目が冴える私なのでありました。



こいつ、なかなかいける!
極めて駄菓子的で素朴な風貌でありながらも、ぱくり頬張ると高級感溢れる上品な甘味が口いっぱいに広がり爽やかな沖縄の黒糖風が鼻孔をくすぐる。
歯応えもそこそこにごくりと飲み込むと咽の奥の上部にまったりと粘るように極上の旨味が残る。
その一連の流れをまた欲っし、直ぐにも次の袋を開けてしまう。

初めてこのお菓子を手にした日、私は数分でひと袋を空にしてしまったのであります。



何処かのスーパーの棚にちょこんとありそうなこのさりげない姿にもぐっと心ひかれるものがある。
裏表紙を覗くとそこにはなんと「熊本」の表示。
そうです、このお菓子ははるばる「熊本」から旅をしてきたのであります。
熊本と言えば九州、九州と言えば沖縄も近い、そこで上質な沖縄産の黒糖を使用する事となったのでしょう。
懐かしい甘さなのですが、うまさプラス新しさも加わったそれにはロマンが溢れておりました。



このむさ苦しく濃い~男ふたり。
ふたりは、とある有名ブランドの敏腕スタッフ。
画面左側は「○ちゃん」長崎市出身東京都在住、画面右側は「チュウ××君」八戸市出身岡山県在住、もちろん住む所は違っても同じ会社、たまたま一緒になっての八戸出張での一場面であります。
この満面の笑みから数日後、○ちゃんからは小洒落た焼き菓子が店へと届き、それには女性スタッフ達が我先にと群がっておりました。
翌日、チュウ××君からこの黒糖菓子が時間差で届いたのであります。
太古の昔から生命を保持して来た私にとって、この素朴な黒糖がビンゴでありました。

食したその日、私はネットで注文したのであります。

しかし、○ちゃんは都内に住んでいるから「洒落た焼き菓子」なのは解るが、岡山在住のチュウ××君はなぜ吉備団子では無く「九州は熊本」のお菓子なのだろう?
微かな疑問が沸き上がった。
しかし、その膨らんだ疑問はある人物の証言によって直ぐにも晴れた。
その証言によれば、彼は住んでいる岡山から夜の博多の街へと足繁く通っているらしいとの事。
そこにはやはり彼にしか解らない、何か黒糖よりも甘美な世界が広がっているに違い無い。
あの無邪気な笑顔と変幻自在なトークを武器に今夜もまた博多の街を大股で闊歩している事だろう。

このお菓子との出会いはそんな煌めく世界のどこか片隅で、と言ったところだろう。



ジャジャ~ン!
発注から数日後、とうとう大量のパックが到着したのであります。
しかししかし、みんなに配ったら残ったのは1パック、これは大事に食わなければいけない。

それにしてもあの「無邪気な笑顔」と言う強力な武器、私もぜひ手に入れたいものだ。