羨望の眼差しにて

思い起こせば高校2年の夏の頃、バイクの免許を取った。
1年生の時にさっさと免許を取りに行っていればそのまま大型二輪でいけたのだが、残念な事に、この年から道交法の法改正があり、私の免許は中型二輪となってしまった。
悔やまれるが法治国家に在籍する身、こうなってはもうどうしようもない。
コラム第31話「初めてのマイバイク」参照
ひとつラッキーな事は、私の通う高校はバイク通学が許されていた事だ。
そこで通学用に400CC以下のバイクを探さなくてはならない。
あれこれと中型バイクを物色中に、ドンズバ・ストライク、私のハートをギュッと鷲掴みにしたバイクが姿を表した。
真っ赤なソリッドタンクにクロームメッキ仕上げの4IN1ビューティフルマフラー。
そう、それはホンダ・ヨンフォワーであった。
この時どんなにこのフォーインワンに恋いこがれたかは、ほんの一言ニ言では語れない。
ただ、高校生がおいそれと買える値段ではない事は誰にでも解る。
そうです、そうなのです。経済的葛藤の末に、あきらめたのです。

この後の人生の道程の中でも、幾度か道路をかっ飛ぶヨンフォアを目撃した事はあったが、雲の上の存在としての認識は消える事はなかった。
そして徐々に影が薄くなり、そして忘れさって行ったのであります。

それが、先日、突然



そのトータルビューティーな姿がひょっこりと出現したのであります!



レストアの行き届いた車体はネジの1本1本までピカピカに磨き込まれ、サビなんてものはどこにもみあたらない。
しかも、私の憧れだったレッドカラー。少なくとも35年は経っている筈だが、なんのその。
21世紀になって再会してみても何の遜色もない。
オーナーも私と同年代だった。やはり彼も学生時代に憧れてはいたものの手に入れる事が出来なかった。
そして今になって、やや薄汚れた姿で再会、一念発起し、2年の歳月をかけて磨きあげたそうであります。
その根気よさ、恐れ入りました。天晴れ!




それにしても時代を超えて、美しい!
どうぞ後生大事にしてやって下さいませ。