ある危険なひとときに


ハ-ハ-・ゼ-ゼ-・ハ-ハ-・ゼーぜー・・・・・・

息を切らしながらのジョギングの最中だった。
どこからともなく「モスラーヤ、モスラーーーーーーー」
と、いつか遠い昔に聞いた覚えのあるフレーズが流れて来た。
懐かしい。懐かし過ぎる。
確か、私がまだ小学生の頃の、そう、あれはザ・ピーナッツが妖精に扮して歌っていたやつだ。
あの頃はよく映画館へと足を運んだものだ。
たっぷりと汗をかいた体に淡い思い出が甦る。

しかしなぜ今モスラなのだ?
そんな疑問がふと頭の中を駆け巡っている時だった。

「えっ、いったいあれは何だ!」
私は一瞬目を疑った。あの遥か向こうの海に浮んでいるのは、もしや・・・・。

モスラ?
モスラの幼虫?
モスラの幼虫ではないか!
イノファント島ではなく、こんな近場に生息していたのか。
子供の頃みたあの映画のモスラは実在していたのか?まったくおどろいた。
酸素の薄くなった私の頭はくらくらと揺らめいた。
そして何気なく空に目をやった私は再び衝撃を受けた。

アナゴ?
空には巨大なアナゴが出現していた。いったい今日はどうしたと言うのだ。
モスラといいアナゴといい、私は少し走り過ぎたのか?次回から少し距離を縮る?

そのうちその巨大アナゴは東の彼方へと消え去って行った。
そうだ、問題はモスラだ。私は前進し、そっと近付いてみた。

どうやら寝ているようだ。
いやいや違う、あれはサナギ化しているのだ。
もしかすれば羽化するのも近いのかもしれない。しかし羽化したらとんでもないことになる。
そうなったらやはり本物の双子の妖精がいなくては大変だ。
私はあたりを懸命に探してみたのだが一向にみつからない。
妖精の方は未だイノファント島にいるのかもしれない。そのうち来るのかな?

「それならそれで、まあ~いっか!」

私は再び走り始めた。