人生の初物


私は悩み続けていた。
どうしても欲しいものがあった。デジタルカメラではどうあがいても残せない、動きのある映像。
そう、ビデオカメラ。
以前から欲しかったのだがなにせ高額、その為になかなか口に出す事が出来ないでいたのだが、ここ最近増々欲しくて欲しくてたまらなくなり、取り合えずどんなものが揃っているのかと、とある大型家電店へ足を運んでみたのです。


「うわ~でか!」
ここは最近オープンしたばかりの市内では一番大きな店鋪。
あるはあるは、多種多様で機能満載、どれもこれもカッコエエ~!
よだれを垂らしつつめぼしいメーカーのカタログをゲットしたのでした。


あれこれと見ているうちに「こいつ」が欲しくなった。
そう、アグネス・ラム、彼女が活躍した時代はアイドル全盛期、あの頃彼女は一番輝いていたな~!って。
違うでしょ、そうじゃなくてカタログの方、その中の一機種をじっと見つめているうちにやっぱり心に火がついてしまった、こうなったらもう止まらない!
だまってカードで買っちゃおうか!と言う事に内心決定し、翌日再び家電店へとやって来たのです。
しかし、いざ買うとなると・・いつかはバレる訳で・・バレた時がまずい訳で・・
やっぱり電話でも一本と、取って付けた言い訳を並べに並べたててなんとか許可をゲット。
「これくださ~い!」となったのでした。


買ったばかりのビデオカメラを片手にウキウキとスキップしながら車に向うと、どこかで見た事のある頭がひとつ。
以前にも登場してもらった、よ志乃鮨のたっちゃんではないか。
「たっちゃん、こんなとこでなにやってんの」

「いや~レンジが故障してさ~まいったよ~」

「それは大変だね。それはそうと、電器屋に来るのにもカッコイイね~」

「だべ~映画スターみたいだべ」

「んだね~映画スターみたいだな~」

「レンジ持った感じもなかなか絵になるし、普通の人じゃこうはいかないよね」

「だべ~い~いね!」

レンジを片手にクレイジー剣ポーズ。さすが南部地方芸能の星!
この後、レンジを両手に抱え、トコトコと極普通に店内へと向ったのでした。
簡単に直ると、い~いね!


そして・・ついに念願のこいつをゲット。
これで世界を撮りまくるぞ~。近いところだと仕事を兼ねて長野に行く予定があるから、まずはそこから撮ってこよう。
浮かれている私にむかってシュビドゥビ「里ちゃん」が言った。
「駅の階段とか変な所でやたらとそれを出さない方がいいっすよ。絶対に変態と間違われますよ。最近そういう人多いし・・ましてやそう見えるし・・」

え!それはまずい・・気を付けなくては・・しっかりと肝に銘じたのでした!