夏の風物詩



とある休日の夕方。

7、8年前にもらったフォークギターを見つけて、「どれ懐かしの昭和フォークでもひいてみようか」と、買って来た曲本を見ながらジャカジャカかき鳴らしていると弦を押さえている左手の指先がヒリヒリと痛み出した。
しばらくギターなんて握ってなかったからこれがまた痛い痛い。
今日はまあ、こんなもんか、と練習を断念。
ふと窓の外を見てみると日が陰り始めたセピアなナイストワイライトタイム。
まあ休みだしビールでも飲むか、と、缶ビール片手に裏庭へ。



ケヤキとエゾエノキは今日も元気だ!そう感じながら缶ビールをごくりとひと口。
「うん、まだ明るいうちに飲むビールは格別にうまい。んっ、なんだあれは?」
私の目に飛び込んで来た小さな物体。


「なんか・・・遠い昔によく目にしていたやつ?かも」
もうひとくちごくりとビールを空の胃にながしこんだ私は一歩一歩その物体の側まで歩み寄ってみた。



それはやっぱりの、セミの抜け殻でありました。
私はセミが好きなのでした。刹那的感情などは一切無くただ単にセミが好きなのでした。
何処かで鳴いているとついその姿を探してしまうのです。小学生の頃などはアブラゼミを捕まえるのに1日中あちらこちらを駆けずり回っていた程でした。
そのセミが、そのセミがなんと裏で羽化しているとは・・なんと魅力的で感動的な出来事ではありませんか。
血圧の上昇にともないビールが進む。
冷えた缶ビールの新しいやつをもう1本持って来た私は、このセミの抜け殻をを覗き込みながらグビグビッと咽の奥深くまで琥珀色の液体を流し込んだのでありました。

まだ地中にいるかもしれないから、明日早起きして観察してみなくてはいけない。