伝統を育む魂のふんばり


創業103年。
このブログでも度々登場して頂いている「蕎麦処・おきな」。
その真心込めて生み出す蕎麦であり、指先を煮えたぎる油の中に突っ込んで華麗にひっくり返す職人技を駆使した天麩羅であり、永年注足した秘伝の蕎麦つゆであり、どれをとってもお客の心を鷲掴みにするうまさ。
私のお気に入りは「天ざる」であります。
これがまたう・ま・いのなんのって、こんちくしょう!
おおっといけない、食いたくなって思わず興奮してしまった、失礼。


「あれっ、しんちゃん、何、今日はどうしたの?そんな堅っくるしい顔して」
「どうしたのって、またまた、今度の日曜日俺のチョッパーで来るってこの前言ったじゃんパチンコにも行かずに、えっ、まさか・・・忘れてたって事はないよね」
「またまた、そんな事ある訳ないでしょ、ナハナハ!」
私は軽く流しましたが、実はすっかりと忘れておりました。
それはあの名店「おきな」4代目のしんちゃん、。そう言えば、なんかそんな他愛無い事を言っていたよーないないよーな、みたいな健忘症の私。


玄関に出てみていやはや、それにしても不良なバイクではありませんか。
フロントフォークの長い事、それではUターンするのにサッカーグランド程の広さが必要ではありませんか。
しかも70年代風Vサイン、それにパーカーから突き出た腹部のこんもり具合が満点パパ。
自信に満ち溢れたその笑顔は、うまい蕎麦を打ち終わった後のドヤ顔と類似。


そのしんちゃん、さりげなくポケットから目薬を取り出し差し始めた。
「最近わかったんだけどさ、俺の目って3次元で見えて無いんだって、だから俺が普段目にしている物って全て2次元で見えてるみたい。そのせいかさ最近すごく疲れやすくってさ、こうして時々目薬を差さないとだめなんだよねー」

何を言っているのかよく解らない私だったが、つまり、世の中をマンガ本なんかの様に縦と横の平面で見てると言うことなのか?その平面てやつで見えている道路をバイクで突っ走る感覚っていったいどんなものなのだろうか、やっぱりよくわからない。


「ふっふっふっふーーーー、でも俺様はそんな事なんてなーんにも気にしてないぜ。
なぜなら2次元も3次元も俺様にとってはたいした違いじゃないんだよ、たかだか2か3のちょっとしたものさ。どおって事ないぜ。さあっそろそろ帰ってうまい蕎麦の準備でもしようかな」
「えっ今日って休みでしょ」
「あっそうだった、ハッハッハッハーーーーーーあっそうそう、明日フロントタイヤのホイールあとひと回り大きくするんだよ、エへッ換えたらまた来るね!」
なーんてお茶目な4代目でございました。これからもまたうまい蕎麦をよろしく!

後日私は、目に良いとおみやげ売り場のおばちゃんから聞いた様な聞か無い様な、にんにくせんべいなる物を持って「おきな」へと向ったのであります。
しかし、どう考えてみてもそれにそんな効果は無い様な気はしますが、まぁいっか。