懐古的衝撃



こいつ、なかなかいける!
極めて駄菓子的で素朴な風貌でありながらも、ぱくり頬張ると高級感溢れる上品な甘味が口いっぱいに広がり爽やかな沖縄の黒糖風が鼻孔をくすぐる。
歯応えもそこそこにごくりと飲み込むと咽の奥の上部にまったりと粘るように極上の旨味が残る。
その一連の流れをまた欲っし、直ぐにも次の袋を開けてしまう。

初めてこのお菓子を手にした日、私は数分でひと袋を空にしてしまったのであります。



何処かのスーパーの棚にちょこんとありそうなこのさりげない姿にもぐっと心ひかれるものがある。
裏表紙を覗くとそこにはなんと「熊本」の表示。
そうです、このお菓子ははるばる「熊本」から旅をしてきたのであります。
熊本と言えば九州、九州と言えば沖縄も近い、そこで上質な沖縄産の黒糖を使用する事となったのでしょう。
懐かしい甘さなのですが、うまさプラス新しさも加わったそれにはロマンが溢れておりました。



このむさ苦しく濃い~男ふたり。
ふたりは、とある有名ブランドの敏腕スタッフ。
画面左側は「○ちゃん」長崎市出身東京都在住、画面右側は「チュウ××君」八戸市出身岡山県在住、もちろん住む所は違っても同じ会社、たまたま一緒になっての八戸出張での一場面であります。
この満面の笑みから数日後、○ちゃんからは小洒落た焼き菓子が店へと届き、それには女性スタッフ達が我先にと群がっておりました。
翌日、チュウ××君からこの黒糖菓子が時間差で届いたのであります。
太古の昔から生命を保持して来た私にとって、この素朴な黒糖がビンゴでありました。

食したその日、私はネットで注文したのであります。

しかし、○ちゃんは都内に住んでいるから「洒落た焼き菓子」なのは解るが、岡山在住のチュウ××君はなぜ吉備団子では無く「九州は熊本」のお菓子なのだろう?
微かな疑問が沸き上がった。
しかし、その膨らんだ疑問はある人物の証言によって直ぐにも晴れた。
その証言によれば、彼は住んでいる岡山から夜の博多の街へと足繁く通っているらしいとの事。
そこにはやはり彼にしか解らない、何か黒糖よりも甘美な世界が広がっているに違い無い。
あの無邪気な笑顔と変幻自在なトークを武器に今夜もまた博多の街を大股で闊歩している事だろう。

このお菓子との出会いはそんな煌めく世界のどこか片隅で、と言ったところだろう。



ジャジャ~ン!
発注から数日後、とうとう大量のパックが到着したのであります。
しかししかし、みんなに配ったら残ったのは1パック、これは大事に食わなければいけない。

それにしてもあの「無邪気な笑顔」と言う強力な武器、私もぜひ手に入れたいものだ。