時は流れて

ひと通り仕事も終わった・・・・う~ん、まだ2時か。
東京出張中、思ったよりもかなり時間に余裕が出来てしまった私は、ふっと思い立ったのです。
学生時代に過した下井草まで足を伸ばしてみようか・・.と。
かれこれ30年は経過している、いやもう少しか。
仕事で洋服の展示会を回るのは殆どが原宿・青山から恵比寿界隈であり、当時よく利用していた新宿方面はとんと御無沙汰なのでした。
どれどれ数十年前にタイムスリップしてみるか。
あの頃住んでいた「陵雲閣」というアパートは果たしてあるのだろうか。当時すでに築年数がある程度経っていた筈だ。


おお~懐かしい、懐かしすぎる光景だ。
夜の新宿でバイトしていて、毎日のようにこの西部新宿線の最終でよく帰ったものだ。
この駅ビルを目にするのも帰郷以来約30年振りだ。
なんにも変わってないような気がするが~壁などやや色褪せた感は否めないかな。
電車もまんまのような気がする。しかし当時よりローカル臭が漂っている感じはなんなんだろう。


おお~下井草だ。いやいや懐かしい、どうしよう!
って、どれどれ降りてみるか。


おお~駅が改築されているではないか。全く近代化されてしまっている。しかもなんと二階建てに。
私がいた頃は改札の所に小さな屋根があるだけの小さな駅舎で、そこを抜けたらすぐそこには線路が走っていたものです。
向こう側に渡るにはか細い屋根付きの歩道橋の様な通路がひとつあっただけ。
それもまたいい味を出していたものですが・・・。


駅前商店街を右側に入り真直ぐ進むとその先に「陵雲閣」はあったはずだ。
いやはや、よく覚えているものだ。この辺はあまり変わってないな~。
ただコンビニがあちらこちらに建っている。時代だね~。
どれどれ・・・確か・・・この先にあったはずだが・・・おお~~~~~~~~~!




あった~~~~~~~~~!
未だ健在で立っていた。感動的だ。
確か1970年に建築されたものだから今年で約40年の歳月が流れた計算になる。
う~~~~~んっ立派なものだ。
それにしてもこの玄関といい、表札といい、この薄暗い階段といい当時のまんまだ。
私の部屋は確か302号室だったと思う。毎日この階段を登ったり降りたりしたのが、まるで昨日のように感じられる程リアルな雰囲気を漂わせている。
「ケンザ~~~~イ、バンザ~~~~イ!」
この後、いつも通っていた銭湯へと足を伸ばしてみたのだが、時代の波には勝てなかったのだろう跡方も無く消え去っていた。淋しいものです。
定食屋のおばちゃんや本屋のおじちゃんは・・・などとも思ったのですが・・・行くのは止めときました。


この通りがメインだと思っていたのですが風の流れが静かな様です。
「お父さん、大丈夫、バスはもうすぐですよ!」


交番はきれいになっていました。
当時お金に困った時に助けて頂いた事を思い出します。
あの緊急援助が無ければ私は今こうして真っ当な人生を歩んでいなかったかも知れませんね。
あの時は本当にありがとうございました。

さて、そろそろ時間だ。帰らなければならない。
もし、この先、このような自由時間が出来たとしたら再びここを訪れてみたいものだ。
そしてその時こそは、大好物だった「生姜焼定食」をたのもうと思っている。
おばちゃんの笑顔は、そこにないのかもしれないけれど.....。